魂と会話した刑事

その人と、
久しぶりに連絡を取った。

「あの話、コラムに書いてもいいかな?」

と言うと、

「いいよ。大事なことは、ちゃんと忘れずに書いてくれ。」

そう返事が返ってきた。


彼の中で、

あの現実が、記憶に変わっていると感じた。



友人宅で初めて会ったその人は、
友人の古くからの知り合いで、
その日私は、どうしても、
友人の家に行きたくなり、
元々の行き先を変更し、
友人宅へ向かった。




彼は、刑事だったが、
警察官に戻りたいと希望し、
田舎の交番(これも、本人の希望)で、
働いていた。


後日、友人と共に
彼の家へ招かれ行くと、


友人から、

彼の刑事時代の

高い検挙率については

聞いていたが、


その証である
表彰状が沢山あった。


が、

誇らしいはずのそれは、
壁に飾るのではなく、
床の間に積み重ねて置いてあった。



こんなに活躍していたのに、
どうして
駐在所へ戻りたかったのか....

実は、友人宅で、会った瞬間、
同類の人間であることが
すぐにわかった。

同類にも、得意分野??
のようなものがあって、この人は、
亡くなった魂と
深く繋がることができた。


特性は、
私のように、
幼少時からずっとの人もいれば、
何かのきっかけで突然、
という人もいる。

この人は、後者だった。


少しの言葉があれば、
何を言いたいのかが、伝わるのも
この特性を持った者同士の特徴。

「わかるんですよね?その...色んなことが...」

「ああ...あれは...」
涙ぐんだ目に、動揺が見えた。

「いいんです、いいんです。話さなくていいんです。」
話をやめようとすると、

「いやいや、ずっと誰にも言えなかった」

彼は、一つ一つ丁寧に
思い返すように、ゆっくり語り始めた。


駐在所勤務を経て、
警察官から、捜査第三課の刑事になった。
窃盗の捜査が仕事だった。

元々、勘が良かったように思う。
なんとなく、犯人の行動が読めた。
高い検挙率を納め、
捜査第一課へ転属となった。

一課は、殺人など凶悪犯罪を扱う。

ある日、通報を受け、
殺人現場の雑木林へ急行した。

30歳くらいの女性が息絶えていた。
亡くなってから
そう時間が経っていないとわかった。

なんとなく、その女性と
話ができるような気がした。

「犯人は、男か?女か?」
と聞くと
「男」
と答えが返ってきた。

「どっちへ逃げた?」
と聞くと
「湖の方」
と返ってきた。


「よし、わかった、必ず捕まえるからな!」



彼は、
湖の方へ移動しながら
捜索するよう仲間へ指示を出した。

犯人は、湖付近で、
身柄を確保された。

が、この何気ない問いかけが、
彼と死者の魂が繋がる回路を
作ってしまった。


その後も、こんなことがあった。
女子大生が飛び降り自殺をしたと
連絡が入った。
通常初動で、
一課がかけつけることはないのだが、
他の事件で、人が出払ってしまい、
たまたま現場へ行くことになった。

生き絶えていた彼女に、

「自殺か?」
と聞くと、
「ちがう」
と言った。

「男に?女に?」
と聞くと、
「男」
と答えた。

「犯人は知り合いか?」
と聞くと、
「はい」
と答えた。


知り合いによる殺人の線で洗っていくと、
ある人物が浮かび上がった。

彼氏と
ビルの屋上でケンカになり
彼女は、無理矢理屋上から
落とされた。



確かに話ができれば、
犯人の早期逮捕ができるし、
検挙率も上がる。

だが彼は、この特性が
得だとは
到底考えることができなかった。



「ご遺体に問いかけると、答えと一緒に、全てが自分の中に入ってくる。逮捕に集中している時はいい。問題は、その後だ。」


そう言う彼の言葉から、
何を言いたいのか、察しがついた。

自分の決断でない死をとげた魂は、
困惑と悲哀と怒りに

満ち溢れていることが多い。

質問の答えと同時に、
それが容赦なく入ってくる。


生々しい魂に触れるのは、
形容し難いほど辛い。


犯人を追いかけている時は、
そのエネルギーで、
蓋をすることができているが、
その蓋がなくなると、
残るのは、
亡くなった方の
困惑と悲哀と怒り


彼の場合、
これを、
嫌というほど共有するのだ。


聞かなければいい、

いや、

そんなことはできない。
今は、それが、
自分の使命だということもわかっている。


彼は、
誰にも言わず、

駐在所へ異動するまで、

使命を全うした。

私が現れなければ、
この話は、墓場まで持っていこうと
思っていたのだと思う。


彼に連絡をとったとき、
「大事なことは、忘れずに書いてくれ」
と、私に言った。
忘れずに、書こう。



生と死の入り口を知っているのは、

魂だ


生も死も、

魂にとっては、

変化の一つ


魂は、 

その変化を繰り返す。


魂に、
変化の過程で
遭遇する痛みがあるならば、

その痛みが癒えるよう
何か、できるはずだ。

彼はきっと、
そんな思いだったのだろう。

#霊魂 #魂

























いっちょ、みてみますか

慧眼(けいがん)、炯眼(けいがん)、達眼(たつがん) 目ではなく眼で見る いっちょ、見てみますか。 今後、ブログ記事は、希望される方のみに配信いたします。

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